MicroAd Developers Blog

マイクロアドのエンジニアブログです。インフラ、開発、分析について発信していきます。

行動データを用いた広告コミュニケーション 行動ターゲティングからフルファネルマネジメントへ

マイクロアドのデータサイエンティストの青井です。広告配信におけるロジック設計などの分析業務を行っています。今回はユーザーにとって役立つ情報を広告で届けるためにマイクロアドが行なってきた行動分析の変遷について紹介します。はじめにRTBと呼ばれるインターネット広告の配信技術について簡単に説明し、どのようにユーザーへ広告を配信しているのかを紹介します。続いて、行動データを用いてどのようにユーザーの興味関心を推定して、広告配信を行なっているのかを紹介します。

RTBによるユーザーへの広告配信

RTBとは

インターネット広告の配信手法には多くの種類が存在しますが、マイクロアドが配信する広告の多くがRTBを用いて配信されています。

RTBとはReal Time Biddingの略称でインターネット上のユーザーがメディアを閲覧した際に広告枠に表示する広告をオークションで決める仕組みのことです。オークションには複数の広告配信業者が参加して入札をして、最高値をつけた参加者の広告が表示されます。これらのやり取りがリアルタイムで行われるためRTBと呼ばれています。なお、オークションを開催するプラットフォームのことをSSP(Supply Side Platform)と呼び、オークションに参加するプラットフォームのことをDSP(Demand Side Platform)と呼びます。マイクロアドはDSPとしてRTBのオークションに参加をしています。

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ユーザーへの広告配信の方法

RTBでは、SSPからDSPへ匿名化された形でユーザーを識別するための情報を送信しており、DSPがユーザーごとに異なる広告を配信することを可能にしています。このようにユーザーごとに広告を配信する手法をターゲティング広告と呼びます。また、リアルタイムで広告の出しわけが可能であるため、適切なタイミングでメッセージを届けることもできます。このように自由度が高い広告配信手法であるRTBでは、適切なユーザーに適切なタイミングでメッセージを届けることで付加価値が高い広告配信を行うことができます。

行動データを用いたユーザーの興味関心の推定

それでは、どのように適切なユーザーに対して適切なタイミングで広告を配信するのでしょうか。マイクロアドではユーザーの行動分析により、その時々でユーザーがどのような興味関心をもっているのかを推定しており、それらの興味関心に応じて配信する広告を最適化しています。

以下ではマイクロアドがこれまでに行ってきた行動データを用いた広告配信とその課題について述べ、現在提供を開始しているUNIVERSE フルファネルマネジメントではどのように行動データを扱っているのかを紹介します。

行動ターゲティングとは

web上でのユーザーの行動によって興味関心を推定して広告配信対象を決める手法を行動ターゲティングと呼びます。マイクロアドでは様々なデータを活用して行動ターゲティングを用いた広告配信を行ってきました。近年ではオンライン行動のみに限らず、オフラインの実店舗における購買行動などのデータの活用も進めています。

主要な行動ターゲティングの手法であるリターゲティングでは、広告で訴求したい商材そのもののコンテンツに対してユーザーがどのように接触しているのかを計測して興味関心の有無を推定します。そこからユーザーが興味関心をもっているであろう商材についての広告を配信します。そのために企業が保有するユーザーの行動データを用いて、個々の商品やカテゴリに対する興味関心の度合いを計測しています。分析で利用する行動データとしては、企業が提供するwebサービスをユーザーが利用した際のログなどです。

また、ユーザーがwebサイトで閲覧したコンテンツの内容から興味関心をもつトピックを推定して、広告で訴求したい商材と親和性があるトピックに興味関心をもつユーザーへ広告を配信することもあります。ユーザーの興味関心を知るためにwebサイトの閲覧履歴や購買履歴などをデータプロバイダとも連携をして取得して、行動分析のために用いています。例としては、海外旅行のセール情報を告知する際に、観光スポットについての記事を閲覧しているユーザーや旅行用品を購入したユーザーに対して広告を配信するといったものになります。

行動データが増えるなかで生じた課題

このようにユーザーの興味関心を推定するために用いる行動データが増えるなかで、分析における課題も生じてきました。まず大きな問題として、取得元が増えるにつれてデータが複数の基盤に分散してしまい、エンジニアやデータサイエンティストが必要なデータを集約するために要する時間が増えてしまいました。そのため、複数のデータを統合して分析をすることができず、分断されたデータからユーザーの興味関心を推定して広告配信を行うケースが発生しました。その結果、それぞれのデータがどの程度KPIに対して有用なのかを評価することができず、広告配信の効率化に支障をきたしました。例えば、商品購買をKPIとして広告配信を行う際に、各種行動データ(過去の購買、webメディア閲覧、PC・スマートフォンブラウジング、広告接触など)がどの程度購買に対して有用かを相対的に評価する際にデータが分散していることが問題になりました。

また、行動分析を詳細に行うためには(集計データではなく)ログに近い形式でデータを蓄積していく必要がありますが、それらの蓄積によるディスク容量の逼迫や処理負荷の増大が問題になりました。特にユーザーの行動を分析をするためには(当然ですが)ユーザー単位での行動データを蓄積する必要があり、広告配信で対象とするような大規模なユーザーの分析を行おうとすると必然的にデータのサイズは大きくなります。また、時系列などの付加情報をもつ行動パターンを扱う際には更に必要とされる容量が大きくなります。上述の例でいうと、海外旅行のセール情報に興味関心をもつユーザーがどのタイミングで情報収集や必要な旅行用品を購入するのかを分析するためには、それぞれの記事閲覧や商品購買についての時系列情報を保持しておく必要があります。

フルファネルマネジメント

前述の課題と取り組むなか、マイクロアドは企業の保有データや第三者データを集約して分析するためのシステム基盤の構築を進めてきました。また、それらのデータを用いてユーザーの興味関心の推移を管理するフルファネルマネジメントと呼ばれる機能の開発を進めてきました。以下では基盤構築に向けた取り組み状況やフルファネルマネジメントの概要を紹介します。

データを集約するための基盤構築

詳しくは先日のエントリーを参照していただきたいと思いますが、マイクロアドではデータを集約する基盤の構築を進めており、現在では日毎に数TBのデータを集約する規模になっています。本基盤の構築によって分析で用いるデータを集約するためのコストを下げ、蓄積するデータの追加を分析の要件によって柔軟に変更することもできるようになりました。このように集約したデータを用いてフルファネルマネジメント機能を提供しています。

フルファネルとは

フルファネルマネジメントの前にファネル自体の簡単な説明をします。

マーケティング用語でいうファネルとは見込み顧客が購買に至るまでの過程をモデル化したものであり、これまでに多くのモデルが提唱されてきました。マイクロアドが扱っているフルファネルもファネルの一種ですが、特徴としてはデータ駆動である点と多様なデータを用いている点が挙げられます。データ駆動であるため、購買過程の仮説(認知→興味→購買意向→購買などの過程)を設けずに、KPIとする行動データを起点として他の行動データとの相関を計算することでファネルを構成します。また、これまでに個別で分析を行っていた行動データを統合して扱い、KPIに対して各行動データがどのように相関しているのかを分析します。

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フルファネルマネジメントの機能紹介

フルファネルマネジメントの機能であるユーザーのスコアリングと行動の可視化について紹介します。

ユーザーのスコアリング

フルファネルマネジメントでは、前述のようにKPIとする行動に対して相関する行動をモデル化したうえで、各ユーザーがKPIに到達する可能性をスコアとして算出しています。分析で用いるデータの種類や行動パターンが多いため、モデルの作成には機械学習を用いています。ユーザーへのスコア付与にはリアルタイム処理と定期実行処理を使い分けており、リアルタイム性が重要となる場合(行動からKPI到達までの時間の間隔が短いなど)はリアルタイムスコアリングを行っています。そして、スコアリング結果を広告配信基盤と連携することで、ユーザーの購買過程における適切なタイミングで広告配信を行うことができます。

興味関心の可視化

スコアリングとあわせて、ファネルにおけるユーザー行動の特徴を可視化するためにKPIと各行動との相関性を可視化する機能を提供しています。可視化には機械学習を用いてモデリングをした際に推定したパラメータを用いています。例えば、海外旅行の資料請求をKPIとした場合を考えると、観光スポットについての記事閲覧などの各行動が資料請求とどの程度相関しているのかを定量的に評価することになります。

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最後に

マイクロアドが行ってきた行動分析の概要について紹介してきましたが、今回紹介できなかった点については今後共有できればと思います。また、今後はデータ活用をさらに推進し、データ基盤と広告配信基盤の連携強化やスコアリングの精度向上を行っていく予定です。

マイクロアドではデータの活用を推進するデータサイエンティストを募集しています。 https://www.green-japan.com/job/58558?case=login&lid=n_other_jobs